不動産投資と相続の流れ:損をしないための手続きと節税対策
親が不動産投資を行っていた場合、あるいは自分が投資用物件を所有したまま万が一の事態になった場合、「投資用不動産の相続」が発生します。不動産は現金と異なり、評価額の計算が複雑で、遺産分割でも揉めやすいため、正しい流れと対策を知っておかないと大きな損をしたり、トラブルに巻き込まれたりする可能性があります。
本記事では、投資用不動産を相続する際の流れと、損をしないための注意点、節税対策について解説します。
1. 投資用不動産を相続する基本的な流れ
相続が発生してから、不動産の名義を変更(相続登記)し、運用または売却するまでの流れは以下の通りです。
ステップ①:遺言書の確認と相続財産の特定
まずは亡くなった方(被相続人)が遺言書を残していないか確認します。並行して、どの不動産(アパート、マンションなど)を所有し、借入金(ローン)がどれくらい残っているか、賃貸借契約書や金融機関の残高証明書などを集めて財産の全容を把握します。
ステップ②:相続放棄の検討(※期限:3ヶ月以内)
投資用物件に多額のローン(負債)が残っており、家賃収入や物件の売却額で賄いきれない「マイナスの財産」である場合、相続放棄を検討する必要があります。この手続きは「相続の開始を知った時から3ヶ月以内」に家庭裁判所へ申立てる必要があるため、スピードが命です。
ステップ③:遺産分割協議の実施
遺言書がない場合、相続人全員で話し合い、「誰がどの財産を引き継ぐか」を決める遺産分割協議を行います。不動産の場合、単独で相続するか、複数人で共有名義にするか(非推奨)、売却して現金を分けるか(換価分割)などを決定します。
ステップ④:相続税の申告・納付(※期限:10ヶ月以内)
遺産の総額が基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)を超える場合、相続開始から10ヶ月以内に相続税の申告と納税を行わなければなりません。
ステップ⑤:相続登記(名義変更)
法務局で、不動産の名義を被相続人から相続人へ変更する手続き(相続登記)を行います。※2024年4月1日から相続登記が義務化されています。
2. 投資用不動産の相続で損をしないためのポイント
団体信用生命保険(団信)の加入状況を確認する
ローンを組んで投資用物件を購入している場合、被相続人が「団体信用生命保険(団信)」に加入しているケースが多いです。団信に加入していれば、死亡時に保険金でローン残債が全額完済されます。つまり、遺族には「無借金の収益物件」が残ることになるため、必ず金融機関に団信の適用を確認しましょう。
不動産の「共有名義」は絶対に避ける
遺産分割協議で揉めないための妥協案として、兄弟3人で3分の1ずつ共有名義で相続する、といったケースがありますが、これは後々の大きなトラブル(損)の元になります。 将来物件を売却したり、大規模修繕を行ったりする際に共有者全員の同意が必要になり、意見が対立すると物件が「塩漬け(身動きが取れない状態)」になってしまうからです。単独相続で代償金を払うか、売却して現金化(換価分割)することをお勧めします。
3. 不動産による相続税の節税効果
不動産投資は、現金を不動産に換えることで相続税の節税効果が期待できます。 現金を1億円相続する場合はそのまま1億円に対して課税されますが、1億円の投資用不動産の場合、相続税評価額は市場価格(時価)の概ね6〜7割程度に下がります。 さらに、第三者に貸している(賃貸している)不動産であれば「貸家建付地」「貸家」としての評価減が適用され、さらに評価額が下がります。これにより、現金で保有しているよりも相続税を大幅に圧縮することが可能です。
4. まとめ
投資用不動産の相続は、「団信によるローンの完済確認」「相続税評価額の算出」「遺産分割(共有名義の回避)」「相続税の納税資金の確保」など、クリアすべき課題が多く存在します。相続開始から期限が定められている手続き(相続放棄3ヶ月、納税10ヶ月)も多いため、不動産に強い税理士や弁護士、不動産会社などの専門家チームに早期に相談し、損のないスムーズな相続手続きを進めましょう。